コミュニティ・オブ・プラクティス

Etienne Wenger / Richard McDermott / William M. Snyder 著 野村恭彦 監修 櫻井祐子 訳
定価:2800円+税 四六判上製 
406ページ ISBN4-7981-0343-8

コミュニティ・オブ・プラクティス(実践コミュニティ)とは、あるテーマに関する関心や問題、熱意などを共有し、その分野の知識や技能を、持続的な相互交流を通じて深めていく人々の集団のことである。これからの知識創造時代に必要なこの理論とその実践を、豊富な事例(世界銀行、ロイヤル・ダッチ・シェル、マッキンゼー・アンド・カンパニー、ゼロックス、ダイムラークライスラーなど)を挙げて説く。解説は、ナレッジ・マネジメントの第一人者である一橋大学大学院の野中郁次郎教授。
情報技術の急激な進歩により、私たちの周囲には情報があふれている。
適切な意思決定を行う上で、無造作かつ無秩序に積み上げられた情報は、
役立つどころか、重要な情報を見分ける目を曇らせ、判断を誤らせることになる。しかし、こうした状況の中でも、環境変化のスピードに負けない速さで、
企業の独自性を創り出していくことが、すべての企業に求められている。
そのために何が必要なのか。本書は、社員一人一人が自発的に集まり、
知識を高めあうコミュニティの存在が、企業の差別化能力を継続的に高めてくれることを示している。このような自発的なコミュニティを支援し、そこから生まれてくる新たな価値を見極める、それが経営トップの新たな役割であることを痛感させられるであろう。

富士ゼロックス株式会社 代表取締役会長 小林陽太郎

組織あるいは職位を越えてさまざまな人々が交流し、
価値観や関心ならびに無形の知識が伝達・共有されるようになれば、
そこは、新たなサービスや新たなマーケットの創造が行われる
知識創造のプラットフォームになるだろう。
本書は、知識創造のスパイラルアップの本質を、
知識による繋がりを持つ自発的なコミュニティにあるととらえ、
幾つもの実践的な実例を用いながら説得力のある方法を提案している。
二一世紀の知識経営において、企業とその経営者は、
新しい社会的価値の創造を通じて企業価値を高めるために、
コミュニティの本質を深く理解しなければならないだろう。

株式会社NTTデータ 代表取締役社長 青木利晴

資産圧縮経営から知的資産をテコとした
次世代成長へのパラダイムシフトが求められている。
そのためには、内外の質の高い人材が、
お互いの知を深く連結させあう「場」をいかに設計するかが鍵を握る。
我々マッキンゼーは、このような場を
「コミュニティ・オブ・プラクティス」という仕組みで運営することによって、最先端の経営課題を組織的に解くことに挑戦し続けている。
多くの日本の経営者が本書を通じて、
「知の新結合」(シュンペーター)によるイノベーションの実践を
力強く進められることを期待してやまない。

マッキンゼー・アンド・カンパニー 日本支社 パートナー 名和高司

大規模組織に象徴される二〇世紀の機能別組織は、
知識社会の今日には適応できない。
そこで一九八〇年代以降情報化によるネットワーク形成が進んだ。
しかし、いよいよ知識の共有と創造の「場」が
システムとして不可欠になってきた。
そこでは企業と人々の協調がカギだ。
組織の情報化も社員が職場に持ち込んだパソコンが発端だった。
実践コミュニティもまた、
人々による知識組織への自発的動きなのである。
著者はその進化の現場の目撃者である。

株式会社コラム代表 紺野登

本書を通じて組織は、
知識を有効活用するための『次の大革命』として、
コミュニティの導入を加速させるであろう。
米国生産性品質センター(APQC)所長 カーラ・オデール
本書を通じて各氏は、あらゆる組織が直面する二つの重要な問題、
つまり、人間のイマジネーションをどのように育くむか、
この境界なき世界の厄介な状況に対処するために
知識をどのように体系づけるか、という問題に取り組み、
創造的な答えを提供している。

南カリフォルニア大学教授 ウォーレン・ベニス

互いに信頼関係で結ばれた組織内コミュニティや、
働くことを大切にするスピリチュアリティとよばれる精神を見失った、
日本企業の迷走が続いている。
成果主義のスローガンのもと、
日本企業が置き去りにしたものはいったい何だったのだろうか。
コミュニティ・オブ・プラクティス(実践コミュニティ)は
この我々が失おうとしている概念に新たな息吹を与えるものである。
本書は企業の方針・価値との一体化や単なる情報の共有化という、
古くからある「場」の概念を超え、
価値創造のダイナミックなメカニズムを提供している。
組織の中のネットワークの質を高め、
その活動をサポートするコーディネータの役割を説き、
コミュニティの活動を評価するメカニズムの提案など、
行き場所を失った組織内のコミュニティ、自信を失った中間管理者、
価値創造の評価の基準づくりに迷う経営者に本書が与える影響は大であり、
日本企業のトランスフォーメーションに大きな参考となるものであると信ずる。

慶應義塾大学総合政策学部教授
慶應義塾大学SFC研究所キャリアリソースラボラトリー 代表 花田光世

マネジャーが知識を社会現象として捉え、
この観点を実践に変換するための適切な方法を規定する、
記念碑的な研究である。

マサチューセッツ工科大学(MIT)教授、組織学習協会会長 ピーター・センゲ

 
 

エティエンヌ・ウェンガー
(Etienne Wenger)

独立コンサルタント。コミュニティ・オブ・プラクティス研究のパイオニアであり、この分野の世界的なリーダーである。Training Magazine 誌には「新しい世代の先見者」シリーズで紹介されている。彼の研究は理論的なものに留まらず、コンサルタントとしても、実践コミュニティの育成をしたり、学習とコミュニティとの間の相乗作用を活用するナレッジ・システムの開発を実際に推進している。なお、Communities of Practice という用語は、ジーン・レイヴとの共著“Situated Learning”(邦訳『状況に埋め込まれた学習』産業図書、平成5年)における造語である。
リチャード・マクダーモット
(Richard McDermott)
マクダーモット・コンサルティング社代表。20年近くにわたって知識組織の設計に携わってきた。実地のコンサルタントとして、全社的なコミュニティ開発に関する幅広い経験があり、また個人的にも多くの実践コミュニティの立ち上げや維持に手を貸してきた。実践コミュニティ及び知識管理に関する論文は、これまで数々の学術誌に掲載されており、Knowledge Management 誌編集委員や講演なども広く行っている。最近では知識共有文化の構築と実践コミュニティに関する2つの国家的ベンチマーク研究のコンテンツ・エキスパートを務めた。
ウィリアム・M・スナイダー
(William M. Snyder)
20年間近くの間、組織開発の分野でコンサルティングを行い、マッキンゼーでは同社及びクライアントの戦略的ナレッジ推進活動に取り組んできた。現在の研究の主眼は市民セクターに当てられ、市民団体や基金、政府機関などの指揮者に助言を与えている。またゴア元副大統領を長とする「国家政府改革パートナーシップ」では、都市問題(家庭保健、公安、労働力開発など)に焦点を当てたいくつかの実践コミュニティの立ち上げに尽力した。
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