導入の概略
今回は「Mantis」の導入を目的とします。簡単にBTSを導入し、利用することを目的としています。細かな手順や詳細な説明は省略させていただきま
す。
環境
今回は以下の環境へ導入をしました。数名で使用する程度の場合、それほど高いスペックは必要ありません。筆者は以下の環境で運用しています。
OS |
Windows XP Professional SP2 |
CPU |
Intel(R) Pentium(R) M 900MHz |
Memory |
512MB |
ただ、設定の仕方はどの環境でもそれほど異ならないため、必要におじて試してもらえればと思います。
Mantisのインストール概略
MantisはHTTPサーバ上で、PHPで動くシステムです。また、データはDataBaseに登録します。そのため、導入には、以下が必要です。
HTTPサーバ |
Apache |
スクリプト言語 |
PHP |
データベース |
MySQL |
BTS |
Mantis |
今回は、Apache、PHP、MySQL、Mantisと導入しますが、すでに一部のモジュールを導入している場合は適宜読み飛ばしてください。
また、以下インストール作業をする場合は、管理者権限のあるユーザでの作業が必要です。
Apacheのインストール
WebでアクセスするためにはHTTPサーバのインストールが必要です。以下の手順に従ってApache HTTP Serverをインストールします。
- まず以下のサイトへアクセスします。
http://httpd.apache.org/
- 次に、左側のDownloadのfrom a mirrorリンクを選択します。
- 必要に応じ、ダウンロードサイトを選択し、必要なモジュールをダウンロードしてください。本編では、Apache HTTP
Server
2.2.42をダウンロードします。ダウンロードはWindows用インストーラ付きモジュール(apache_2.2.4-win32-x86-
no_ssl.msi )がよいでしょう。
- ダウンロードが完了したら、ダウンロードされたファイルをダブルクリックしてください。
- インストーラが起動しますので、デフォルトの指定のままでインストールをしていきます。
- 以下の画面が表示されるので、ServerNameに自ホスト名とメールアドレスを入力してください。(何かが入力されていれば
問題はありません。)

- インストールが終了する前に、Windowsファイアウォールから警告が出る場合がありますが、その場合は警告を解除してくださ
い。
- インストールが終了したら、httpd://localhost/に
アクセスしてください。「It works!」と表示されれば、Apacheのインストールは終了です。
MySQLのインストール
MySQLはMantisが利用するデータベースです。以下手順でインストールしてください。
- 以下のサイトへアクセスします。
http://www.mysql.com/
- 左側のメニューのDownloadsを選択してください。
- MySQL Community Serverのダウンロードを選択します。
- OSのリストが出てくるので、一番上のWindowsを選択します。
- Windows Essentials (x86)のPick a mirrorを選択してください。
- Mirrorサイトが表示されるのでJapanからダウンロードをしてください。
- ダウンロードしたファイル(mysql-essential-5.0.37-win32.msi)を実行してくださ
い。
- インストーラが起動するので、デフォルトのままInstallを実行します。
- Installが終了すると、セットアップ画面が表示されます。必要に応じて、MySQL.com.accountのアカウントを作成してください。今回
はSkip Sign-Upを選択しNextを選択します。

- 続いて、MySQLのセットアップ画面が表示されるので、デフォルトのまま、Nextを選択していきます。
- 以下の画面でdatafileをどこに作成するかを選択できます。必要なら、作成する場所を変更してください。

- 次に、デフォルトの文字コードを選択できるので、「Best Support For
Multilingualism」を選択します。

- 次に、以下の画面が表示されるので、「Include Bin Directory in Windows
PATH」を選択しておきます。

- rootユーザのパスワードを適当に入力してNextを選択してください。

- 次に、以下画面表示されるので、Executeを選択してください。

- 以下のエラーが出るようですが、特に気にせずもう一度、Retryを選択すれば、正常に終了します。

- インストールが正常に終了しているかを確認するために、コマンドプロンプトを起動します。コマンドプロンプト上で、「mysql
-u root -p」とコマンドを入力してください。
- パスワードの入力を促されるので、先ほど設定したパスワードを入力すると、ログインできます。
- ついでに、Mantis用のデータベースも作成しておきます。MySQLにログイン後、「create databae
bugtracker;」とコマンドを実行してください。
mysql>
create database bugtracker;
Query
OK, 1 row affected (0.00 sec) |
- データベースが作成されたかは、「show databases;」と入力すると確認できます。
mysql> show databases;
+--------------------+
|
Database
|
+--------------------+
| information_schema |
|
bugtracker
|
|
mysql
|
|
test
|
+--------------------+
4 rows in set (0.00 sec)
mysql> |
- これでMySQLのインストールは終了です。「quit;」と入力してログアウトします。
PHPのインストール
PHPはMantisを動かすためのスクリプト言語です。PHPの実行をHTTPサーバから動かすための設定を以下手順で行います。
- 以下のサイトへアクセスします。
http://www.php.net/downloads.php
- 本編では、Windows Binariesのinstaller付きモジュールをダウンロードします。ここでは、PHP
5.2.1 installer 選択します。
- ダウンロードモジュールを選択すると、ダウンロードサイトが表示されるので、Japanのサイトからダウンロードすればよいで
しょう。
- ダウンロードが完了したら、ダウンロードされたファイルをダブルクリックしてください。
- インストーラが起動しますので、指示通りにデフォルトでインストールをしていきます。
- 途中で以下の画面が表示されますので、Apache2.2を選択してください。

- すると、Apacheのコンフィグレーションファイルのディレクトリを入力する画面が表示されるので、通常なら「C:\
Program Files\Apache Software Foundation\Apache2.2\conf\」を入力します。

- 次に、インストールする内容を選択できるので、Extensions/MySQLを選択し、Nextを選択します。

- 次の画面でInstallを実施します。すると、Apacheのconfigを修正するインストーラの起動を確認するので、「は
い」を選択します。(選択しない場合、手動でhttpd.confを修正することもできます。)

- 上記インストールでは、まだPHPからMySQLの利用ができません。以下のファイルの該当部分のコメントを解除してください。
(653行目の1カラム目のセミコロン;を削除します。)
ファイル名:C:\Program Files\PHP\php.ini
旧 |
; extension=php_mysql.dll |
新 |
extension=php_mysql.dll |
- Apacheを再起動します。(再起動の方法は、タスクトレイのApacheMonitorからRestartで実行できま
す。)

- PHPのインストールが成功しているかを確認します。以下のファイルを作成してください。
ファイル名:C:\Program Files\Apache Software Foundation\Apache2.2\htdocs\phpinfo.php
- 以下のURLにアクセスしてください。PHPが有効なら、PHPの設定内容を確認することができるはずです。もし、表示できない場合は、URLなどを再度確認してください。
http://localhost/phpinfo.php
Mantisのインストール
さていよいよMantisのインストールです。
- 以下のサイトへアクセスします。
http://www.mantisbt.org/
- 左側のメニューのDownloadsを選択してください。
- 今回は安定版のMantis 1.0.6を利用します。Download Mantis 1.0.6を選択します。
- mantis-1.0.6.tar.gz
を選択してダウンロードしてください。ダウンロードファイルはtar+gzip形式でアーカイブされています。そのままで解凍できない方は、窓の杜や
Vector Japanから圧縮解凍ツールを導入してください。(今回ははArchive decoderというフリーソフトを利用しました。窓の杜からダウンロード
できます。)
- 解凍ソフトにもよりますが、解凍されるとフォルダmantis-1.0.6というフォルダが作成されていると思います。このフォ
ルダをすでに
導入されているApacheのhtdocsフォルダ以下へ移動します。Apacheのhtdocsフォルダは通常、C:\Program
Files\Apache Software
Foundation\Apache2.2\htdocsになります。そのため、以下のフォルダが作成されることになります。
C:\Program Files\Apache Software
Foundation\Apache2.2\htdocs\mantis-1.0.6
- ブラウザを起動し、以下のURLにアクセスしてください。
http://localhost/mantis-1.0.6/admin/install.php
- Mantisの導入画面が表示されますので、以下のように項目を設定してください。ここでは変更が必要な項目のみ記述します。そ
れ以外はデフォルトのままでOKです。(もし表示されない場合、Apacheの起動がされているか、URLは正しいかを確認してください。)
Password (for Database) |
MySQLを導入した際に指定したパスワード |
Admin Username (to create Database) |
MySQLを導入した際のユーザID。通常は'root'。 |
Admin Password (to create Database) |
MySQLを導入した際に指定したパスワード |
値を入力したら、Install/Update Databaseというボタンを選択してください。
- 成功するとすべての項目に緑色で「Good」と表示されるはずです。表示されない場合は、Mantisを導入したディレクトリに
書き込み権限があるか、今までの設定にミスがないかを確認してください。
Mantisの初期設定
- 再度以下のURLにアクセスしてください。
http://localhost/mantis-1.0.6/index.php
- 以下の画面が表示されますので、管理者権限でログインしてください。デフォルトのユーザIDとパスワードは以下です。
ユーザID |
administrator |
パスワード |
root |
- ログインに成功すると、以下の画面が表示されます。

- パスワードの変更を行います。メニューの「My Account」を選択します。Passwordに任意のパスワードを入力し「Update User」をクリックすればOKです。
- 次に、英語が苦手な人は表示を日本語モードに変更しておきましょう。Mantisはユーザごとにデフォルトの言語を選択できま
す。変更する場合は 、「My Account」>「Preferences」を選択します。
そこの設定項目の最下行に「Language」があるので、そこを「japanese_UTF8」に変更して、「Update
Prefs」をクリックしてください。しばらくすると再表示され、日本語表示に切り替わります。次回ログイン時にも日本語で表示が可能になります。(言語設定はログインユーザごとに設定できます。)
- 以下のフォルダを適当な名前でリネームしておきましょう。以下修正の例です。
旧 |
C:\Program Files\Apache Software
Foundation\Apache2.2\htdocs\mantis-1.0.6\admin |
新 |
C:\Program Files\Apache Software
Foundation\Apache2.2\htdocs\mantis-1.0.6\admin.org |
以上で、導入は成功です。
Mantisの初期設定
メールを利用しない場合
Mantisを利用する前に最低限の初期設定をしますが、まずはメールを利用しない場合の設定を簡単に説明します。Mantisはメールシステムと連動することを前提としていますが、メールを利用しないでも運用
は可能です。以下、手順を記します。
- 以下のファイルをエディタで開きます。
C:\Program Files\Apache Software
Foundation\Apache2.2\htdocs\mantis-1.0.6\config_inc.php
- メールを利用しない場合は、以下のように記述を追加します。
<?php
$g_hostname = 'localhost';
$g_db_type = 'mysql';
$g_database_name = 'bugtracker';
$g_db_username = 'root';
$g_db_password = 'hogehoge';
$g_enable_email_notification
= 'OFF'; //
この行を追加
?> |
- Apacheの再起動は必要ありません。
メールを利用する場合
メールを利用する場合は、メールサーバの設定が必要になります。(ここでは何も制限のないメールサーバの設定のみを取り上げます。SMTP認証などはマニュアル等を調べてください。)
- 以下のファイルをエディタで開きます。
C:\Program Files\Apache Software
Foundation\Apache2.2\htdocs\mantis-1.0.6\config_inc.php
- メールを利用する場合は、以下のように記述を追加します。
<?php
$g_hostname = 'localhost';
$g_db_type = 'mysql';
$g_database_name = 'bugtracker';
$g_db_username = 'root';
$g_db_password = 'hogehoge';
//
以下2行を追加
$g_phpMailer_method
= '2'; // 2はsmtpの使用
$g_smtp_host
= 'sample.mail.server'; // ここに送信メールサーバを指定
?> |
- アカウントの登録はデフォルトでは未登録のユーザ自身がメールを利用して登録することができます。ログイン画面の「Signup for a new account」を利用すれば可能です。(詳細については割愛します。)
Mantisの運用
ここまでの設定ですでにMantisの運用は可能です。あとは画面を見ながらいろいろ試してみれば勘のよい方なら、実際の運用は可能でしょう。ただ、初めてBTSを利用する方には少しわかりにくいかもしれません。そこで、サンプル的な運用方法を記してみたいと思います。
プロジェクトとカテゴリの作成
プロジェクトを作成します。Mantisではプロジェクトという単位で障害を扱えます。ユーザ毎に参照や書き込みの権限なども変
更できます。
- メニューの「システム管理」>「プロジェクト管理」を選択し、「新しいプロジェクトを作成する」というボタンをクリックします。
- プロジェクト名を適当な名前で入力し、追加ボタンをクリックしてください。これでプロジェクトが作成できました。
次に、該当プロジェクトにカテゴリを登録しておくとよいでしょう。カテゴリは障害を分類する区分で、自由に設定できます。たとえば、サブチームごとにカテゴリを定義してもよいでしょうし、障害の内容で分類してもよいでしょう。
- メニューの「プロジェクト管理」からカテゴリを登録したいプロジェクトを選択し、カテゴリの項目にカテゴリ名を入力し「カテゴリの追加」を実行すればOKです。(あとから、いくつでも登録や修正が可能です。)
ユーザの追加
メールを有効にしている場合、ユーザ自身にアカウントを登録してもらうことも可能ですが、ここでは、管理者がユーザアカウントを作成する方法を記します。
- 管理者権限でログインし、メニューの「プロジェクト管理」を選択します。
- 「アカウント作成」ボタンをクリックします。
- 必要なユーザ情報を登録して、「登録」ボタンをクリックします。
- しばらくすると、ユーザ情報の編集画面が表示されるので、「パスワードのリセット」をクリックします。これで、このユーザは次回のログオンはパスワードなしでログオン可能になります。
また、一番下の「言語」をほかのユーザとそろえておきましょう。(作成したユーザ自身に修正してもらうことも可能です。)
Bugの登録からステータス管理
Bugの登録は難しいことはありません。
「登録」ボタンを押し、必要な内容を入力するだけです。また登録するときに、
「プロジェクト」を選択していないと、選択を促す画面が表示されますので、プロジェクトを選択して下さい。
- メニューの「登録」を選択
- カテゴリなどを選択し、障害の要約と詳細を記述し「登録」を実行します。
これで登録は終了です。マイビューや検索から参照することができます。次に、ステータス管理を行います。ステータスは該当の障害がまだ誰も未着手なのか、すでに着手したのか、対応が完了したのかなどを管理する項目です。
- ステータスを変更したい障害をマイビューか検索画面から選択します。
- 変更したいステータスを選択して、ステータス変更ボタンを押します。
- すると、コメントを入力できるので、コメントを入力し実行します。これで、ステータスが任意のステータスに変更できたはずです。
以上で、BTSの導入についての簡単な説明は終了します。MantisはGUIがとてもわかりやすく、そのままの設定で使う場合は、マニュアルを参照しな
くても利用できると思います。使い込んでいくうちに、権限の管理やステータスの追加、ワークフロー管理などを追加したくなるかもしれません。その場合は、前述の
http://www.mantisbt.org/を参照してください。
Mantisを使用すると障害管理をとても効率よくチームで共有できます。
「開発の現場Vol.008 “進化する”テスト仕様書の作成/
運用テクニック」もあわせてご参照ください。