BTSのインストール

2007/03/30 KAWAKAMI Fumio

はじめに

今回は、「開発の現場」との連動として、BTS(Bug Tracking System)の導入をご紹介します。

導入の概略

今回は「Mantis」の導入を目的とします。簡単にBTSを導入し、利用することを目的としています。細かな手順や詳細な説明は省略させていただきま す。

環境

今回は以下の環境へ導入をしました。数名で使用する程度の場合、それほど高いスペックは必要ありません。筆者は以下の環境で運用しています。
OS Windows XP Professional SP2
CPU Intel(R) Pentium(R) M 900MHz
Memory 512MB

ただ、設定の仕方はどの環境でもそれほど異ならないため、必要におじて試してもらえればと思います。

Mantisのインストール概略

MantisはHTTPサーバ上で、PHPで動くシステムです。また、データはDataBaseに登録します。そのため、導入には、以下が必要です。
HTTPサーバ Apache
スクリプト言語 PHP
データベース MySQL
BTS Mantis
今回は、Apache、PHP、MySQL、Mantisと導入しますが、すでに一部のモジュールを導入している場合は適宜読み飛ばしてください。

また、以下インストール作業をする場合は、管理者権限のあるユーザでの作業が必要です。

Apacheのインストール

WebでアクセスするためにはHTTPサーバのインストールが必要です。以下の手順に従ってApache HTTP Serverをインストールします。

  1. まず以下のサイトへアクセスします。
    http://httpd.apache.org/
  2. 次に、左側のDownloadのfrom a mirrorリンクを選択します。
  3. 必要に応じ、ダウンロードサイトを選択し、必要なモジュールをダウンロードしてください。本編では、Apache HTTP Server 2.2.42をダウンロードします。ダウンロードはWindows用インストーラ付きモジュール(apache_2.2.4-win32-x86- no_ssl.msi )がよいでしょう。
  4. ダウンロードが完了したら、ダウンロードされたファイルをダブルクリックしてください。
  5. インストーラが起動しますので、デフォルトの指定のままでインストールをしていきます。
  6. 以下の画面が表示されるので、ServerNameに自ホスト名とメールアドレスを入力してください。(何かが入力されていれば 問題はありません。)
  7. インストールが終了する前に、Windowsファイアウォールから警告が出る場合がありますが、その場合は警告を解除してくださ い。
  8. インストールが終了したら、httpd://localhost/に アクセスしてください。「It works!」と表示されれば、Apacheのインストールは終了です。

MySQLのインストール

MySQLはMantisが利用するデータベースです。以下手順でインストールしてください。

  1. 以下のサイトへアクセスします。
    http://www.mysql.com/
  2. 左側のメニューのDownloadsを選択してください。
  3. MySQL Community Serverのダウンロードを選択します。
  4. OSのリストが出てくるので、一番上のWindowsを選択します。
  5. Windows Essentials (x86)のPick a mirrorを選択してください。
  6. Mirrorサイトが表示されるのでJapanからダウンロードをしてください。
  7. ダウンロードしたファイル(mysql-essential-5.0.37-win32.msi)を実行してくださ い。
  8. インストーラが起動するので、デフォルトのままInstallを実行します。
  9. Installが終了すると、セットアップ画面が表示されます。必要に応じて、MySQL.com.accountのアカウントを作成してください。今回 はSkip Sign-Upを選択しNextを選択します。

  10. 続いて、MySQLのセットアップ画面が表示されるので、デフォルトのまま、Nextを選択していきます。
  11. 以下の画面でdatafileをどこに作成するかを選択できます。必要なら、作成する場所を変更してください。
  12. 次に、デフォルトの文字コードを選択できるので、「Best Support For Multilingualism」を選択します。
  13. 次に、以下の画面が表示されるので、「Include Bin Directory in Windows PATH」を選択しておきます。

  14. rootユーザのパスワードを適当に入力してNextを選択してください。
  15. 次に、以下画面表示されるので、Executeを選択してください。

  16. 以下のエラーが出るようですが、特に気にせずもう一度、Retryを選択すれば、正常に終了します。

  17. インストールが正常に終了しているかを確認するために、コマンドプロンプトを起動します。コマンドプロンプト上で、「mysql -u root -p」とコマンドを入力してください。
    c:\> mysql -u root -p
  18. パスワードの入力を促されるので、先ほど設定したパスワードを入力すると、ログインできます。
  19. ついでに、Mantis用のデータベースも作成しておきます。MySQLにログイン後、「create databae bugtracker;」とコマンドを実行してください。
    mysql> create database bugtracker;
    Query OK, 1 row affected (0.00 sec)
  20. データベースが作成されたかは、「show databases;」と入力すると確認できます。

    mysql> show databases;
    +--------------------+
    | Database           |
    +--------------------+
    | information_schema |
    | bugtracker         |
    | mysql              |
    | test               |
    +--------------------+
    4 rows in set (0.00 sec)

    mysql>

  21. これでMySQLのインストールは終了です。「quit;」と入力してログアウトします。

PHPのインストール

PHPはMantisを動かすためのスクリプト言語です。PHPの実行をHTTPサーバから動かすための設定を以下手順で行います。
  1. 以下のサイトへアクセスします。
    http://www.php.net/downloads.php
  2. 本編では、Windows Binariesのinstaller付きモジュールをダウンロードします。ここでは、PHP 5.2.1 installer  選択します。
  3. ダウンロードモジュールを選択すると、ダウンロードサイトが表示されるので、Japanのサイトからダウンロードすればよいで しょう。
  4. ダウンロードが完了したら、ダウンロードされたファイルをダブルクリックしてください。
  5. インストーラが起動しますので、指示通りにデフォルトでインストールをしていきます。
  6. 途中で以下の画面が表示されますので、Apache2.2を選択してください。

  7. すると、Apacheのコンフィグレーションファイルのディレクトリを入力する画面が表示されるので、通常なら「C:\ Program Files\Apache Software Foundation\Apache2.2\conf\」を入力します。

  8. 次に、インストールする内容を選択できるので、Extensions/MySQLを選択し、Nextを選択します。

  9. 次の画面でInstallを実施します。すると、Apacheのconfigを修正するインストーラの起動を確認するので、「は い」を選択します。(選択しない場合、手動でhttpd.confを修正することもできます。)
  10. 上記インストールでは、まだPHPからMySQLの利用ができません。以下のファイルの該当部分のコメントを解除してください。 (653行目の1カラム目のセミコロン;を削除します。)
    ファイル名:C:\Program Files\PHP\php.ini
    ; extension=php_mysql.dll
    extension=php_mysql.dll

  11. Apacheを再起動します。(再起動の方法は、タスクトレイのApacheMonitorからRestartで実行できま す。)
  12. PHPのインストールが成功しているかを確認します。以下のファイルを作成してください。
    ファイル名:C:\Program Files\Apache Software Foundation\Apache2.2\htdocs\phpinfo.php
    <?php
    phpinfo();
    ?>
  13. 以下のURLにアクセスしてください。PHPが有効なら、PHPの設定内容を確認することができるはずです。もし、表示できない場合は、URLなどを再度確認してください。
    http://localhost/phpinfo.php

Mantisのインストール

さていよいよMantisのインストールです。
  1. 以下のサイトへアクセスします。
    http://www.mantisbt.org/
  2. 左側のメニューのDownloadsを選択してください。
  3. 今回は安定版のMantis 1.0.6を利用します。Download Mantis 1.0.6を選択します。
  4. mantis-1.0.6.tar.gz を選択してダウンロードしてください。ダウンロードファイルはtar+gzip形式でアーカイブされています。そのままで解凍できない方は、窓の杜や Vector Japanから圧縮解凍ツールを導入してください。(今回ははArchive decoderというフリーソフトを利用しました。窓の杜からダウンロード できます。)
  5. 解凍ソフトにもよりますが、解凍されるとフォルダmantis-1.0.6というフォルダが作成されていると思います。このフォ ルダをすでに 導入されているApacheのhtdocsフォルダ以下へ移動します。Apacheのhtdocsフォルダは通常、C:\Program Files\Apache Software Foundation\Apache2.2\htdocsになります。そのため、以下のフォルダが作成されることになります。
    C:\Program Files\Apache Software Foundation\Apache2.2\htdocs\mantis-1.0.6
  6. ブラウザを起動し、以下のURLにアクセスしてください。
    http://localhost/mantis-1.0.6/admin/install.php
  7. Mantisの導入画面が表示されますので、以下のように項目を設定してください。ここでは変更が必要な項目のみ記述します。そ れ以外はデフォルトのままでOKです。(もし表示されない場合、Apacheの起動がされているか、URLは正しいかを確認してください。)
    Password (for Database) MySQLを導入した際に指定したパスワード
    Admin Username (to create Database) MySQLを導入した際のユーザID。通常は'root'。
    Admin Password (to create Database) MySQLを導入した際に指定したパスワード
    値を入力したら、Install/Update Databaseというボタンを選択してください。
  8. 成功するとすべての項目に緑色で「Good」と表示されるはずです。表示されない場合は、Mantisを導入したディレクトリに 書き込み権限があるか、今までの設定にミスがないかを確認してください。

Mantisの初期設定

  1. 再度以下のURLにアクセスしてください。
    http://localhost/mantis-1.0.6/index.php
  2. 以下の画面が表示されますので、管理者権限でログインしてください。デフォルトのユーザIDとパスワードは以下です。
    ユーザID administrator
    パスワード root
  3. ログインに成功すると、以下の画面が表示されます。
  4. パスワードの変更を行います。メニューの「My Account」を選択します。Passwordに任意のパスワードを入力し「Update User」をクリックすればOKです。
  5. 次に、英語が苦手な人は表示を日本語モードに変更しておきましょう。Mantisはユーザごとにデフォルトの言語を選択できま す。変更する場合は 、「My Account」>「Preferences」を選択します。
    そこの設定項目の最下行に「Language」があるので、そこを「japanese_UTF8」に変更して、「Update Prefs」をクリックしてください。しばらくすると再表示され、日本語表示に切り替わります。次回ログイン時にも日本語で表示が可能になります。(言語設定はログインユーザごとに設定できます。)
  6. 以下のフォルダを適当な名前でリネームしておきましょう。以下修正の例です。
    C:\Program Files\Apache Software Foundation\Apache2.2\htdocs\mantis-1.0.6\admin
    C:\Program Files\Apache Software Foundation\Apache2.2\htdocs\mantis-1.0.6\admin.org

以上で、導入は成功です。

Mantisの初期設定

メールを利用しない場合

Mantisを利用する前に最低限の初期設定をしますが、まずはメールを利用しない場合の設定を簡単に説明します。Mantisはメールシステムと連動することを前提としていますが、メールを利用しないでも運用 は可能です。以下、手順を記します。
  1. 以下のファイルをエディタで開きます。
    C:\Program Files\Apache Software Foundation\Apache2.2\htdocs\mantis-1.0.6\config_inc.php
  2. メールを利用しない場合は、以下のように記述を追加します。
    <?php
        $g_hostname = 'localhost';
        $g_db_type = 'mysql';
        $g_database_name = 'bugtracker';
        $g_db_username = 'root';
        $g_db_password = 'hogehoge';

        $g_enable_email_notification = 'OFF'; // この行を追加
    ?>
  3. Apacheの再起動は必要ありません。

メールを利用する場合

メールを利用する場合は、メールサーバの設定が必要になります。(ここでは何も制限のないメールサーバの設定のみを取り上げます。SMTP認証などはマニュアル等を調べてください。)
  1. 以下のファイルをエディタで開きます。
    C:\Program Files\Apache Software Foundation\Apache2.2\htdocs\mantis-1.0.6\config_inc.php
  2. メールを利用する場合は、以下のように記述を追加します。
    <?php
        $g_hostname = 'localhost';
        $g_db_type = 'mysql';
        $g_database_name = 'bugtracker';
        $g_db_username = 'root';
        $g_db_password = 'hogehoge';

        // 以下2行を追加
        $g_phpMailer_method = '2';   // 2はsmtpの使用
        $g_smtp_host = 'sample.mail.server'; // ここに送信メールサーバを指定
    ?>
  3. アカウントの登録はデフォルトでは未登録のユーザ自身がメールを利用して登録することができます。ログイン画面の「Signup for a new account」を利用すれば可能です。(詳細については割愛します。)

Mantisの運用

ここまでの設定ですでにMantisの運用は可能です。あとは画面を見ながらいろいろ試してみれば勘のよい方なら、実際の運用は可能でしょう。ただ、初めてBTSを利用する方には少しわかりにくいかもしれません。そこで、サンプル的な運用方法を記してみたいと思います。

プロジェクトとカテゴリの作成

プロジェクトを作成します。Mantisではプロジェクトという単位で障害を扱えます。ユーザ毎に参照や書き込みの権限なども変 更できます。
  1. メニューの「システム管理」>「プロジェクト管理」を選択し、「新しいプロジェクトを作成する」というボタンをクリックします。
  2. プロジェクト名を適当な名前で入力し、追加ボタンをクリックしてください。これでプロジェクトが作成できました。
次に、該当プロジェクトにカテゴリを登録しておくとよいでしょう。カテゴリは障害を分類する区分で、自由に設定できます。たとえば、サブチームごとにカテゴリを定義してもよいでしょうし、障害の内容で分類してもよいでしょう。
  1. メニューの「プロジェクト管理」からカテゴリを登録したいプロジェクトを選択し、カテゴリの項目にカテゴリ名を入力し「カテゴリの追加」を実行すればOKです。(あとから、いくつでも登録や修正が可能です。)

ユーザの追加

メールを有効にしている場合、ユーザ自身にアカウントを登録してもらうことも可能ですが、ここでは、管理者がユーザアカウントを作成する方法を記します。
  1. 管理者権限でログインし、メニューの「プロジェクト管理」を選択します。
  2. 「アカウント作成」ボタンをクリックします。
  3. 必要なユーザ情報を登録して、「登録」ボタンをクリックします。
  4. しばらくすると、ユーザ情報の編集画面が表示されるので、「パスワードのリセット」をクリックします。これで、このユーザは次回のログオンはパスワードなしでログオン可能になります。
    また、一番下の「言語」をほかのユーザとそろえておきましょう。(作成したユーザ自身に修正してもらうことも可能です。)

Bugの登録からステータス管理

Bugの登録は難しいことはありません。「登録」ボタンを押し、必要な内容を入力するだけです。また登録するときに、「プロジェクト」を選択していないと、選択を促す画面が表示されますので、プロジェクトを選択して下さい。
  1. メニューの「登録」を選択
  2. カテゴリなどを選択し、障害の要約と詳細を記述し「登録」を実行します。
これで登録は終了です。マイビューや検索から参照することができます。次に、ステータス管理を行います。ステータスは該当の障害がまだ誰も未着手なのか、すでに着手したのか、対応が完了したのかなどを管理する項目です。
  1. ステータスを変更したい障害をマイビューか検索画面から選択します。
  2. 変更したいステータスを選択して、ステータス変更ボタンを押します。
  3. すると、コメントを入力できるので、コメントを入力し実行します。これで、ステータスが任意のステータスに変更できたはずです。
以上で、BTSの導入についての簡単な説明は終了します。MantisはGUIがとてもわかりやすく、そのままの設定で使う場合は、マニュアルを参照しな くても利用できると思います。使い込んでいくうちに、権限の管理やステータスの追加、ワークフロー管理などを追加したくなるかもしれません。その場合は、前述のhttp://www.mantisbt.org/を参照してください。

Mantisを使用すると障害管理をとても効率よくチームで共有できます。「開発の現場Vol.008 “進化する”テスト仕様書の作成/
運用テクニック」もあわせてご参照ください。